THE NORM NUTRITION JOURNAL -いわきFC-
2025年8月25日
“見える化”されたコンディション管理 -検査値に基づく栄養サポート –

2023年1月、NORMはサッカーJ2リーグのいわきFCとのビジネスパートナー契約を締結した。NORMといわきFC は「栄養」の分野においてタッグを組み、血液検査の結果などをもとにした、科学的根拠に基づく栄養サポートやサプリメント提供によるトータルサポートの体制を構築している。
このコラムでは、NORMがいわきFCに派遣し栄養サポートを行う、管理栄養士/公認スポーツ栄養士・飯澤拓樹が、選手達の食事情やスポーツ栄養にまつわるさまざまな情報をお伝えする。
◆熱狂の中で感じた「いわきFCの戦う姿」
8月から再開したJ2リーグ。いわきFCの選手たちは、この夏も「魂の息吹くフットボール」を体現しています。
私も8月2日、フクダ電子アリーナで行われた第24節ジェフユナイテッド千葉戦を現地観戦しました。前半から一進一退の攻防が続き、鋭いパスや身体を張った守備にスタンドのどよめきも止まりませんでした。2-2のドローとなりましたが、アウェーにも関わらず駆けつけた多くのサポーターが声を枯らし、最後まで選手を後押ししていました。
試合後、選手同士が肩を叩き合う姿を見て、「このコンディションを保つために日々どれほどの努力があるのか」を改めて実感しました。

◆いわきFCはなぜ年に複数回、血液検査を行うのか
いわきFCでは科学的根拠に基づき、トレーニング・栄養・リカバリーを最適化するために、数多くの取り組みがなされています。どれもがJリーグはおろか他の競技を見渡しても特徴的であり、先駆的な取り組みです。その中でも、特に栄養管理と関連が深いのが血液検査です。年に複数回チーム全体で採血検査を実施し、その結果をチームドクター・管理栄養士が連携して選手へフィードバックする体制を整えています。
一般的な健康診断は年に1回です。それに対して、なぜいわきFCでは年に何度も血液検査を実施するのでしょうか?その理由は「栄養状態の正確な把握」が不可欠だからです。食事記録や写真から分かるのは「摂ったはず」の栄養素量。しかし、実際の吸収・利用は個人差が大きく、食事内容だけでは判断できません。そこで血液検査を活用し、栄養素が体内で十分に行き渡っているか、利用されているかを直接評価します。食べた食事が身体の中でどう使われているかは、「食事を見るだけでは不十分」なのです。
いわきFCの検査では、一般的な検査項目に加え、栄養素の充足や、筋疲労、パフォーマンスに関連する指標なども測定。こうした情報が、選手一人ひとりの食事戦略やサプリメント活用に直結しています。


◆検査で明らかになった意外な変化
日々の栄養管理を行っていても、体内では思わぬ変化が起きていることがあります。その一例が「血中ビタミンDレベル(25-OHD)」の測定結果です。ビタミンDは、食事からの摂取や日光を浴びることにより体内で合成され、カルシウムの吸収や骨の形成に不可欠な栄養素として知られています。不足や欠乏は、アスリートにおける怪我の発生1や、負傷からの回復の遅れ2にも関連すると報告されています。
チームドクター・齋田先生が2020年のコロナ禍に発表したデータ3によると、例年なら冬から春にかけて日照時間の延びとともに血中ビタミンDレベルは上昇するはずが、その年は外出自粛の影響で、全選手が「不足」レベルを示していました。当時、選手たちは高い知識と意識を持って日々の栄養管理に取り組んでいたにもかかわらず、ロックダウンによる日光不足が大きく影響したと考えられます。

このように、「十分やっているはず」でも、実際に数値で確認すると予想外の結果が出ることは少なくありません。だからこそ、「検査して初めてわかる事実」が重要なのです。
◆検査値に基づいた栄養サポート
病院などの臨床現場では、血液検査に加え、身体計測や問診、場合によっては食事調査や画像診断など、多角的なデータを集めたうえで栄養指導を行います。検査値に基づいたアプローチは、効果的な栄養改善に大変重要です。
一方で、スポーツ現場に目を向けると、こうした血液検査や各種測定を、年間を通して継続的に行っているチームはごくわずかです。予算や設備、スケジュールの制約があることは事実ですが、最新のスポーツ科学の知見を現場に活かそうとすれば、年に複数回の検査・測定を実施することが理想的といえます。
いわきFCはまさにその理想を実現しているチームです。定期的な検査・測定によって選手一人ひとりのコンディションを「見える化」し、ドクター・トレーナー・管理栄養士が連携して、各選手個別の改善策を提案。これは、日本のスポーツ界の中でも先進的で、今後のモデルケースとなり得る取り組みだと言えるでしょう。


◆NORMの血液検査実施事例
NORMでは、アスリートが手軽に「コンディションの見える化」を実現できるサービスを提供しています。通常の血液検査は医療機関で静脈採血を行い、その場で検体を預けますが、NORMの検査は“指先からのごく少量の自己採血”で完結します。
専用キットを使い、指先に小さな針をあてて血液を採取。採取した血液は容器に入れて専門分析機関へ送付します。プロアスリート向けのサービスでは、数日後、管理栄養士によるオンラインヒアリングを実施。検査結果とあわせて、食事やサプリメントの具体的な提案を含めた食生活改善のフィードバックが行われます。

医療機関まで足を運ばずとも、自宅やチームのクラブハウスなど、日常の延長線上で検査できるのは大きなメリットです。特に、遠征や試合で忙しいアスリートにとって、時間や場所の制約なく受けられることは大きなメリットではないでしょうか。
これまで血液検査を受けたことがなかった方も、まずは一度、自分「コンディションを見える化」し、数値で確かめてみることをオススメします。感覚や経験だけでは見えない部分が、はっきりと浮かび上がってくるはずです。
<血液検査サービスに関するお問い合わせ:https://www.norm-inc.jp/contact>
10周年記念マッチも快勝し、後半戦からさらに勢いに乗るいわきFC。チーム目標達成のため、全力でサポートに取り組みます!皆様も引き続き、いわきFCの応援をよろしくお願いいたします!!
飯澤 拓樹(いいざわ ひろき) 管理栄養士、公認スポーツ栄養士、修士(スポーツ健康科学) 新潟医療福祉大学卒業、福岡大学大学院修了後、スポーツサプリメントメーカーやスポーツテック企業を経て、ノーム株式会社に入社。 現在はいわきFCやホッケー女子日本代表さくらジャパンの管理栄養士を務めるほか、ノーム契約アスリートの栄養サポート、商品企画・開発に携わる。 |
参考文献
1. Şenışık, S., Köyağasıoğlu, O. & Denerel, N. Vitamin D levels on sports injuries in outdoor and indoor athletes: a cross-sectional study. Physician and Sportsmedicine 50, 164–170 (2022).
2. Yagüe, M. de la P., Yurrita, L. C., Cabañas, M. J. C. & Cenzual, M. A. C. Role of Vitamin D in Athletes and Their Performance : Current Concepts and New Trends. Nutrients 12, (2020).
3. Saita, Y. Risk/caution of vitamin D insufficiency for quarantined athletes returning to play after COVID-19. BMJ Open Sport Exerc Med 6, e000882 (2020).